JRCSWU

2003年度賃金 妥結・調印

日赤労働者725号



人事院勧告反対のたたかい


  全日赤の賃金闘争は、人勧準拠反対のたたかいと併せて闘ってきました。
 二〇〇三年度の賃金闘争では、春期に賃上げ枠を決めて配分交渉をはじめるという今までの賃金交渉形態を本社が無視し、「賃金引下げ四月実施を認めるか、人事院勧告に準拠することを協定化せよ」と迫り、拒否した組合に対して協定の破棄通告を行いました。
 全日赤はこの不当労働行為とも言うべき不誠実な対応を改めさせるため、中央労働委員会に日赤労組とともに「あっせん申請」を行いました。七月二五日のあっせん作業において、中労委は、本社の訴えを認めずに「口頭提案」を提示しました。
 口頭提案では、「自主交渉を再開し早期解決が図られるよう誠実に努力せよ」として、本社が今まで誠実に交渉を重ねてきたという主張を退け、本社に対し全日赤の申請事項である誠実団交の開催を求めています。
 また本社が「もともとの人勧準拠にもどす」と主張したことに対して、中労委は「具体的回答ができる時期であることも踏まえ賃金に係る自主交渉を」提案していることからして、人勧を参考とすることがあっても、白紙委任を迫ることなく具体的回答を示し交渉すべきであると、人勧準拠を押しつけることを否定し、自主回答・自主決着を求めた全日赤主張が認められたものです。
 こうして本社の「人勧準拠の押しつけ」は否定されるとともに、その回答を繰り返すのみの団交は回数に限らず不誠実であることが明らかになり、本社の攻撃を跳ね返すことができました。全国からの本社に対する抗議・要請を集中した統一闘争の成果であるとともに日赤労組と全日赤が共同してあっせん申請したことが大きく影響したものです。


二〇〇三賃金について


(1)交渉経過
 中労委の口頭提案に基づき八月一九日に賃金交渉の団交が再開され、本社は例年とは違い、第一次回答から日赤独自改善を含めた回答を行いました。しかし人勧に基づいた2年連続の本俸引き下げや扶養手当・調整手当・通勤手当の見直しを含め、全体で平均一・〇三%額にして三六八三円の賃下げ回答を行いました。また併せて「年間調整を行う」として四月からの賃下げ分を一時金から差し引くことも回答しました。
 全日赤は、賃金の引き下げは認めがたく、賃金引き下げの理由を追及しするとともに、一時金での調整については、不利益不遡及の原則に反するものであり断固反対であることを追及し、第二次回答を求めて次回団交の確認をしました。
 全日赤は、次回団交に向けて「不利益遡及はするな!賃金・一時金反対署名」を新たに取り組むとともに、九月五日の本社前抗議要請行動の準備を強化しました。その結果、九月四日の団体交渉において特殊勤務手当の増額や住居手当の引き下げ額縮小および「年間調整はしない」とする第二次回答を引き出すことができました。
 賃金の引き下げにはなったものの、本社の狙いであった「賃金引き下げ四月実施」をたたかうことで跳ね返し、「一〇月実施の年間調整なし(遡及しない)」とさせ一人平均三六八三円(一・〇三%)の賃下げ八ヶ月分二九、四六四円の収入を守ったことになりますし、全体では、約一五億七千万円の削減を食止めたことになります。これは人勧準拠反対闘争の面からみても大きく評価できるとともに、同業他社を含め医労連の仲間に与える影響は大きいと言えます。
 全日赤中央闘争委員会は、九月五日の本社前抗議行動は中止して報告集会に切り替え、本社の第二次回答に対する意見を聞いて、九月六日の単組・地方協代表者会議にて妥結の了承を得た上で、九月八日に本社に対し妥結の意思表示を行いました。
 その後中央委員会にて妥結の承認を得て九月二九日に妥結の意思表示をした日付で二〇〇三年度賃金改定に調印しました。
 二〇〇三年度賃金改定の結果は、俸給平均〇・八二%、額にして二九四五円の引き下げとなりました。跳ね返りおよび扶養手当の引き下げや特殊勤務手当の引き上げなどを合わせると全体で平均〇・九八%、額にして三五二六円の賃金引き下げとなり、定期昇給の平均一・八六%、額にして六六七四円を含めると平均〇・八八%、額にして平均三一四八円の賃上げ結果となりました。
(2)本俸について
 (1) 医師を除く各俸給表とも初任給付近の引下げ率は〇・五%、額で千円前後と平均より押さえられており、モデル賃金上三二歳付近が平均の三千円前後の引き下げとなっている。
 (2) 老人保健施設に勤務する介護福祉士、医療施設の療養型病床群に勤務する介護福祉士及び介護職員、並びに肢体不自由児施設及び重症心身障害施設に勤務する介護福祉士及び介護職員については、福祉職俸給表を適用できるようになった。
 (3) 実施時期は平成一五年一〇月一日とした。
(3)手当関係
 (1) 扶養手当は、一人目の扶養親族にかかる扶養手当の額について、五百円引下げ現行一四、〇〇〇円が一三、五〇〇円となった。実施時期は平成一五年一〇月一日とした。
 (2) 調整手当が、転勤先の施設の方が低い場合の経過措置として、現行三年間は転勤前の調整手当としていたところを、二年間に短縮し、二年目は八〇%となった。また既に転勤した者への措置として平成一六年度は百%、平成一七年度は八〇%とした。実施時期は平成一六年四月一日とした。
 (3) 医師確保手当は、定額分について医師一人当たり全国平均で二千円程度引下げとなった。実施時期は平成一五年一〇月一日とした。
 (4) 通勤手当のうち、交通機関利用者に対して支払われる運賃等相当額(定期券代)を現行の一ヶ月から六ヶ月に改定した。また支給上限を現行五万円から五万五千円に引上げ、差額二分の一条項を廃止し、五万五千円まで全額支給とした。
 自動車等の利用者に対して、四〇?以上の支給区分を設けた。実施時期は平成一六年四月一日とした。
 (5) 住居手当は、持ち家の手当を五百円引下げて、現行二千五百円を二千円とした。(新築購入の加算額二千五百円は現行どおり)実施時期は平成一五年一〇月一日とした。
 (6) 特殊勤務手当の額を三〇円引上げ現行五八〇円を六一〇円とした。また放射線作業手当の支給対象者を管理区域内で業務をし一ヶ月百マイクロシーベルト以上の被爆をした者にまで拡大した。(従前の対象者については現行どおり)実施時期は平成一五年一〇月一日とした。
 (7) 深夜手当加算の支給対象に介護福祉士を加えることとした。実施時期は平成一五年一〇月一日とした。
(4)昇格基準の改善
 医療職俸給表(二)の適用を受ける職員のうち臨床工学技士、視能訓練士、言語聴覚士、義肢装具士および心理判定員で役付でない職員について、一定の要件を満たす者を現行四級までを五級まで昇格できるようにした。実施時期は平成一六年四月一日とした。
(5)協定書
 協定破棄の通告を撤回させるまでには至りませんでしたが、破棄により効力を失う協定の復元を約束させ、協定書にて「回復措置として」を明記しました。昨年とは違い「協定の書き換え」だけではすまない状況を作り出したものであり、今回の本社が行った協定破棄という行為が、不当なものであったことを表していると言えます。
(6)確認書・覚書
 確認書は、福祉職俸給表への切り替えについて、俸給表を作った時の切り替え表しか労使の確認がなく、本社は従前から適用してきた表を異なる任命替えの基準で運用すると回答したので、それを全日赤との確認にしました。
 覚書は二通あり、一つは全日赤が追及し作成しました。通勤手当の一括支給後に通勤方法が変わった場合の取扱について、まだ決めていないとの回答であったので、決まり次第、労使協議することを「提示」ではなく「提案」という表現で約束しました。また継続課題として昇格基準および双子・三つ子の改善や特殊勤務手当については、引き続き検討することを約束しました。
 二通目は、本社より求められた文書で「一時金は社長決定としたい」との提案に対する交渉をもつことを文書確認したものです。全日赤は交渉は行いますが、そのなかで全国最低基準をつくり、その基準をもとに各施設の労使で一時金を決めるよう追及します。





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