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許されない!
日赤本社も勤務評定による一時金査定導入を提案

日赤労働者729号



 日赤本社は、一時金の施設決定を社長決定への変更提案の際に、「勤務成績による割合」=「成績率」を導入する意向を表明しました。
 勤務評価など成果主義賃金・人事考課賃金の導入は、いかに医療・看護の現場にそぐわない制度であるかを、ある病院の労働組合の経験とアンケート結果を紹介します。今後のたたかいの糧としてとらえて、導入反対の世論を大きくしていくことが重要です。

目標管理・人事制度の中で

 勤務成績による賃金評価の新人事制度は、目標をたてて、その目標の達成度合いによって評価することになっています。評価は絶対評価(仮にAからD迄の四段階評価で全員がAでも可)となっていますが、問題点として次の点があげられていました。
 それは、(1)あらかじめ人件費総額を決めた枠内で評価したランク付による配分ですから、経営者側は人件費を抑制でき、(2)その結果、月例賃金の定期昇給の平均額が、三年前は八千円台から今は五千円台と大幅に下がったこと、(3)そして、評価を下すことに戸惑う看護師長の退職から始まり、評価を受ける側の退職者も多くなり、在職年数が大幅に引下がったことです。
 この原因をアンケート結果から探ってみたいと思います。

評価基準

(1)成果だけで評価されるのが適当だと思うか→いいえ(九六%)
(2)仕事評価が賃金に結びつくことに納得できるか→いいえ(七九%)
(3)上司の評価に客観的な基準があると思うか→いいえ(六六%)
(4)昇格・賃金配分の仕組みがわかるか→いいえ(九三%)
●仕事に対する評価が賃金に反映する制度だが、その評価に「正当性・納得性」に多くのものが不満を抱いている。

チーム医療

(1)この制度でチームワークが保てない(八一%)
(2)チーム医療に有益な制度とおもわない(八五%)
(3)制度導入後、職場は働きやすいか→いいえ(九三%)
●成績主義賃金制度は、チーム医療にとってマイナスと否定している。

目標管理の有用性

(1)目標が業務に役立つか→いいえ(五二%)
(2)目標達成と日常業務の間に矛盾を感じる(八九%)
(3)医療の質は向上しない(七一%)
(4)この制度で病院が活性化するか→いいえ(八八%)
●活性化をうたい文句に導入した制度だが、職員の思いは、日常業務と乖離した目標が設定されていること、医療の質やチーム医療に圧倒的に否定的である。

労働実態と時間外労働

(1)目標に追われ、仕事量が増えた(九〇%)
(2)勤務時間内に目標に関する仕事が出来ていない(九一%)
(3)目標管理に関する仕事を時間外として請求できなかった(九八%)
(4)請求しても時間外として認められなかった(六四%)
(5)請求しない残業が多くなった(七九%)
●殆どの職員が目標管理に関する仕事を時間外として請求していないし、時間外とは認められず、不払い残業が横行している。
一時金の業務成績割合
 現在一般職員は、九〇(基礎額)対一〇(業務成績)で査定されている。今後この割合を広げるべきでない(八四%)し、業績割合は五%以内(四六%)、業績なしを臨む職員(三〇%)も多い。

ストレスと働きがいの喪失

(1)目標管理がストレスになる(八九%)
(2)仕事にやりがいを感じるようになったか→いいえ(九二%)
(3)現状のT病院に魅力を感じるか→いいえ(九四%)

職員の声

―医療・看護―
◎目標管理を重視するあまり、ナースコールや電話にも出なくて、患者中心の医療・看護がされていない。
◎目標管理や記録に多く時間をとられ、ベッドサイドケアが出来ない。
◎目標は患者のためでなく、自分の評価のために行なっているようなもの。
◎目標管理に使う労力を患者のために使えば、活気のある魅力ある病院になると思う。
―職員の動向―
◎成果主義賃金の導入により、退職者が多くなった。
◎この制度が始まってから仕事量が増え、人間関係もギスギスしたものになった。
◎顔が見えないし、人とひとの関係が希薄になった。
―不安・ストレス―
◎毎日何かに追われている気がして、心休まる日がない。
◎毎日仕事に行くのが憂鬱で、びくびくしている。
―病院への訴え―
◎制度導入後、病院に活気が無くなり、病院に魅力を感じなくなった。
◎数量化できない業務を無理に数量化して評価するところに、大きなひずみを感じる。
◎学生の頃、もっとベッドサイドにいけることを夢見ていたが、当時の夢や希望はゼロに等しい。
◎いくら頑張っても更にいろんなことを要求され、何処まで頑張ればいいだろう。
◎職員を大事にする組織でないと、地域から信頼されない。

労働組合に団結して

(一)

 以上みてきたように、人事考課・成果主義賃金制度を導入された職場では、成績と上司の目が気になり、患者さんへの対応やより良い看護の提供がおろそかになることを訴えています。そればかりか、いっそうの「合理化」や過密労働が押しつけられ、医療人としての働く意欲や誇り、医療・看護に対する夢や希望を奪い去るものではないでしょうか。
 組合の幹部は、「『仕事に対する評価に基づいた賃金』と耳障りのよい響きではあるが、結局全員の賃金水準が下がったこと。管理の面が強くなりすぎて、職員は今にも窒息しそう。この閉塞した状態を打開するための課せられた責任は大きい」と言っています。

(二)

 日赤本社は、一時金に成績率を導入しようとしています。私たちは、労働組合にしっかり団結して、導入を許さない世論づくりと運動を強める必要があります。




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