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「成果主義」に道を開く一時金に対する勤務評定に断固反対の声を

日赤労働者731号



 日赤本社はいま、一時金の決定方式を本部本社間交渉で行うことを打ち出すと同時に、一時金の算定に勤務評定を導入するよう各施設を指導しています。これまでにも一時金の3割相当を占める勤勉手当部分に関しては、欠勤日数などによって査定が行われてきました。今回さらに勤務評定で職員をランク分けして上位ランクに位置づけられた人には普通の人より多く勤勉手当を支給し、最低ランクの人は減額するというのです。こんなことが毎回の一時金で行われたら職場のチームワークは乱され、みんなが気持ちよく働くこともできなくなるでしょう。また、経営側にとって「評価に値する能力」とは、とりもなおさず経営にとって役立つ能力・経営者が求める能力であり、患者や施設利用者に喜ばれる能力が評価されるというものでもありません。経営側に都合の良い能力開発・人材育成が勤務評定によって促進される可能性も高まり、やがては「目標管理」による「成果主義賃金」へと続いていくことが予測されます。

勤務評定の行きつく先…成果主義賃金とは?

 世間では、すでに大企業を中心に「成果主義賃金」が導入されています。この賃金制度は、ベースアップや定期昇給によって経験年数とともに賃金が上昇する従来の「年功賃金」に変わって、人件費の抑制を最大の目標として導入されたものです。個々の労働者の目標に対する達成度を上司が面接によって評価・査定し、賃金のランクを決定します。最低の評価を受けた場合、降格や賃下げになります。一方、労働者からは「会社の期待通りの成果を上げても従来の定期昇給の半分しか賃金が上がらない」「これまではたとえ賃上げがゼロでも定期昇給にによって賃金は確実に上がったのに、成果主義ではそれもなくなる」との不満の声も聞かれます。経営側も「成果主義は特定の人の給与は増えるが、圧倒的な人は減るというものだ」(松下電器の幹部)などとあけすけに語っています。また、他社に先駆けて成果主義賃金を導入した富士通では、評価の方法が不透明であることに対して労働者の怒りが爆発し、会社側は二度にわたって制度の手直しをしています。ある職場では「ほかの労働者が困っているのを助けても成果にはならない」としてチームワークが破壊される事態にも及んでいます。いのちを預かる医療現場で労働者どうしを競争させる成果主義が実行されたら、いったいどういうことになるのでしょうか?

「好き嫌い」で評価が決まる

 勤務評定をめぐる深刻な問題として、そもそもそれが公平・公正にできるかどうかという点があります。人間が評価する以上、「印象評価」(好き嫌い)を避けて通ることは難しいでしょう。実際に松井証券の社長は「所詮、評価は好き嫌いだ。それ以外にはやりようがない。目標の設定だとかその達成度合だとか細かいことをやるほど非人間的になる」と述べています。
 赤十字病院の看護師の場合、一次評定は師長が各人の実績(仕事の成果)や能力、取組姿勢について「絶対評価」を行い、最終評定は看護部長が「相対評価」によってAからDまでの4ランクに選別することになっています。最終評定を行う看護部長は、すべての看護師の日常の働きぶりまで熟知しているとでもいうのでしょうか?
 また、評定結果を記入した「勤務評定等報告書」は非公開とされ、評定結果に対する「苦情処理制度」というのもありませんし、労働組合が評定結果に口を挟む余地もありません。賃金は労使が対等の立場で決定するという労働基準法の基本原則をも踏みにじられることになるのです。
 賃金や処遇が個別管理されることによって労働者はバラバラにされ、労働組合の機能そのものが弱体化していきます。今後さらに評定結果によって賃金が変化するようになると、ローンなど人生設計がたてにくくなるということにもなっていきます。

勤務評定が職場に及ぼす影響の数々

 「目標管理」の導入とともに勤務評定によって職場に競争がもちこまれると、(1)スタッフ同士で足の引っ張り合いや評価を上げるためのスタンドプレーが起こり、職場のチームワークが破壊される。(2)ミスは評価を下げることになるので、「事故隠し」が増える危険性もでてくる。(3)情報の独り占めが、医療事故につながることにもなりかねない。(4)優れた技術は評価を高めるので、他者への技能・技術の伝承が阻害される。(5)評価の対象とならない仕事は、やりたがらなくなる。(6)評価を下げないようにするために「サービス残業」が今以上に増える。(7)上司(評価者)へのゴマすりや「イエスマン」が増え、自由にものが言い合える民主主義が否定されることによって職場の真の発展がなくなる。(8)評価する職制にも、あらたな業務としての評価行為が加わることによって加重労働となる。また、「公正」な評価をしようと思えばストレスがたまり、自らのメンタルヘルスにも大きな悪影響を及ぼす。等々。
 実際に「目標管理」が導入された病院では、労働者から数々の不満の声があがっています。「もっと病院全体で内容が高まる(地域住民の方から魅力ある病院と思われる)ことをやるべき。お互いの足の引っ張り合いをしてもよくならない。自分たちもおもしろくないし、一生懸命働いていても目標の入力時期にくると、ため息ばっかり」、「…仕事はしないが口はうまい!うまく立ち回れる人間のみが高い評価を受けている…」、「たとえ成果物ができても次に違う目標であるため継続されない。患者さんのために行っているものではなく、自分の評価のためだけに行っているようなものである。バカらしい…」

みんなで学んで本質を見極めることが大事

 「普段の働きぶりが評価され、それで給料やボーナスも上がるのならいいのでは」「若い人の方が年配の人よりよく働いているのに給料が安いのはおかしい」などの思いから、勤務評定や成果主義に賛成する声も聞かれます。しかし、公平・公正な評価という言葉からはほど遠い現実、そして、賃金が上がるのは極限られた一部のエリートだけ、全体としては賃金が抑制されることになるということが分かれば、だれもこれに賛成はしなくなるでしょう。ましてチームワークを基本とする医療の現場において、働くものを競争させ、選別する成果主義は、けっしてなじまないものです。今のところ本社は、特別昇給の申請と一時金だけに勤務評定を活用するといっていますが、その行き着く先は成果主義であることをみんなで学習して本質を見極めることが大切ではないでしょうか。




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