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代休or振替は現場労使で判断 室蘭休日出勤問題で本社見解示す 4・26本社団交

日赤労働者733号



 全日赤本部は室蘭赤十字血液センターの休日出勤をめぐる問題について、中央労働委員会の勧告を労使双方受諾したことをふまえ、四月二六日本社団交のなかで交渉しました。
  全日赤はまず、北海道地方労働委員会命令は「休日勤務の取り扱いについては、…労使の協議によってその都度決められてきた事実」を確認していること、そしてその上にたって中央労働委員会の勧告は「センター及び組合は、平成一五年九月一日付けの『確認書(労働条件に関する諸問題については、円満解決に向け、労使双方努力する)』の趣旨をふまえ、今後、意思の疎通を図り、健全な労使関係を確立するよう努めること」としていること、したがって、室蘭の休日出勤については、今後も、その都度労使協議し、円満解決に向け労使双方努力することを求めました。
  これに対し本社は、「支配介入、不誠実交渉という事実はなかったと思っているが、今後もそういった懸念がなされることは少なくなっていくのではないか」と述べ、「休日の勤務を振替でやるか代休でやるかはそれぞれ現場で協約、規則を運用・適用していくものであり本社は言及する立場にない。一義的に現場で判断すべきものである」と回答しました。
  このことは、休日出勤を協約通り代休処理にするか、または就業規則で振替処理にするかは、各施設の労使でよく協議して決めるべき問題であることを、本社として明らかにしたものです。
  また、中労委勧告は全日赤の労働協約について、休日の取扱い等を含め現行法に則した見直しをする必要性認めて、本社と全日赤間で労働協約の見直しに向けて協議するよう働きかけています。この点について全日赤は、労基法一条二項は「労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない」としており、この現行法に則して今後協議していくことを求めました。
  これに対し本社は、「現行法に則して協議することについてはやぶさかでない」、「労働条件の低下は認めないという組合主張は当然のことと思うが、労基法一条二項と代休・振替を直接つなげるのはいかがなものかと思う。一条二項は振替はダメと直結している話ではないと思う」と述べました。
  全日赤本部は不利益変更を許さず協議継続していきます。

室蘭赤十字血液センター事件・和解成立の意味

2004年4月  
東京法律事務所  
弁護士 上條貞夫

1 休日出勤と団交

  休日出勤については、全日赤と日赤本社の賃金協定のなかに、交替制勤務と断続勤務だけは休日振替を認める定めがあるけれども(協定第28・3項)、この例外を除いて賃金協定にも労働協約にも休日振替の定めはない。休日出勤には割増賃金の支払いと代休が保障される(代休付与の場合の割増賃金の計算について、賃金協定第30・2項ただし書き)。
  日赤職員が全日赤の組合員になれば、この労働協約と賃金協定の適用を受けて、交替制、断続勤務以外の休日出勤は割増賃金と代休の扱いをうける。
  1985年2月に結成された全日赤室蘭赤十字血液センター労働組合は、結成当初から休日出勤に割増賃金の支払いを要求した。しかし所側は、休日はすべて振替えると言って双方の主張は平行線のまま、実際の処理としては、その都度労使協議によって、様々な扱いがなされてきた。
  それが2000年暮れの、年末年始の休日の扱いをめぐる団体交渉では、所側はゼロ回答をくり返すばかりで、団交の回数は重ねるものの中身はカラ回りのまま、所側は一方的に休日出勤命令を出し、従わなければ処分すると言い出した。
  組合は北海道地方労働委員会に団交斡旋を経て不当労働行為救済の申し立てをした(不誠実団交事件。労働組合法第7条2号違反)。

2 団結の底力 

  ところが北海道地労委は、不当にもこの救済申し立てを棄却した。早速、事件は中央労働委員会に移った。中労委は短期間の充実した審理の後、職権で労使双方に和解を勧告した。こういうケースでは、公益委員、労働者委員、使用者委員の三者構成の労働委員会制度が、紛争解決のために裁判所にはできない実に有効な機能を発揮する。委員各位とりわけ松井保彦労働者委員には本当にお世話になった。2004年3月1日、中労委の和解勧告書の第1項は、つぎのように、形式団交では意思の疎通が不十分で正常な労使関係が損なわれることを明記し、北海道地労委命令が形式団交で足りるとした誤りを正した。(同勧告を労使双方受諾)
「センター及び組合は、平成15年9月1日付の『確認書』の趣旨をふまえ、今後、意思の疎通を図り、健全な労使関係を確立するよう努めること」
  ここに引用されている「確認書」こそ、キメ手だった。というのは、中労委の和解手続きのさなか、現地では差し迫った平成15年9月15日の休日出勤をめぐって、全日赤本部の参加する9月1日の団交で、徹底した追及が行われた結果、一方実施に歯止めをかける原則が、「労働条件に関する諸問題については、円満解決に向け、労使双方努力する」と「確認書」に盛り込まれた。後日、所側は、9月15日は公平の立場から非組のみへの出勤命令は出さず職員の都合を聞いて勤務配置する、との文書回答があり、15日を前に当日の勤務割りには組合員も含められた。組合は「職員の都合を聞いて」という点、当該職場で非組合員に対し、組合が休日出勤について係争中であり新たな紛争にならないよう協力を求め、非組合員の了承を得て組合員と非組合員が個人交替することで当日は全員、非組合員で勤務することとなった。
  この、団結の力でかちとった「確認書」とその活用の実績が、のちに中労委の和解勧告書の中に盛り込まれたのである。
こうして、本来の団体交渉のルールが中労委和解によって再確認され、本当にはたらきやすい、はたらき続けられる職場作りを目指す新しいスタートラインが確保された。弁護団としても、団結の底力に改めて確信を深めている。

以上

 




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