JRCSWU

2004年度賃金妥結・調印
俸給表の改定なし、定期昇給のみ6,558円(1.86%)

日赤労働者737号



1、人事院勧告反対のたたかい

 日赤本社は、人事院勧告(人勧)に準拠することを基本方針とし賃金交渉を行ってきました。これに対して全日赤は、自主交渉のできる民間である日赤において人勧を持ち出すこと自体、不誠実であるとして人勧準拠反対の方針を一貫して貫き、長年に渡り賃上げ交渉を行ってきました。
 たたかいの到達点として、本社は人勧準拠方針を持ちながらも団体交渉においては、日赤の賃金として回答してきました。しかし二〇〇二年度の人事院がマイナス勧告を出して以降、本社は「協定破棄通告」を常套手段としながら、「人勧準拠の協定化」を迫るようになりました。二〇〇三年度賃金交渉では、人勧準拠が今までの賃金改定におけるルールであるかのように描き出そうとしましたが、中央労働委員会(中労委)の「口頭提案」によって、本社の目論見を阻止することができました。
 口頭提案では、「自主交渉を再開し早期解決が図られるよう誠実に努力せよ」として、本社が今まで誠実に交渉を重ねてきたという主張を退け、本社に対し全日赤の申請事項である誠実団交の開催を求めています。また本社が「もともとの人勧準拠にもどす」と主張したことに対して、中労委は「具体的回答ができる時期であることも踏まえ賃金に係る自主交渉を」提案していることからして、人勧を参考とすることがあっても、白紙委任を迫ることなく具体的回答を示し交渉すべきであると、人勧準拠を押しつけることを否定し、自主回答・自主決着を求めた全日赤主張が認められたものです。
 結果、今年度の賃金交渉では、またも人勧準拠の協定化を迫ってきましたが、交渉の中で昨年のようなあからさまな人勧準拠を持ち出すことができずに「民間準拠」と言わざるを得ない状況まで押し戻すことができました。今後一層、自主回答・自主決着のルールを確立するようたたかいを強める必要があります。

2、協定破棄通告とのたたかい

 今年度の賃金交渉では、昨年中労委の「口頭提案」に基づいて調印した協定を本社は一年も経たないうちに破棄することを通告してくる不当な行為を繰り返しました。
 全日赤は昨年に引き続き日赤労組と同時に「協定破棄の撤回」と「誠実団交の再開」を求めて中労委へあっせん申請を行いました。早期解決を目指し事務局あっせんを求めましたが、中労委は昨年とは違いあっせん委員を選定し、七月二六日の第一回あっせん作業では、昨年同様に全日赤の主張を盛り込んだ「口頭発言」を示しました。さらに昨年とちがい「来年は協定破棄をしなくても良いように労使双方で案を知恵を出してほしい」と「附言」を付け加えました。
 また賃金改定が合意に到ったあとの九月八日の第二回あっせん作業においては、全日赤が、「度重なる協定破棄は『解約権の乱用』にあたり違法であるので撤回すべきだ」との主張をしました。結果、昨年同様に「無協約状態にならないよう、引き続き、労使が努力すること」と併せて、今後の賃金交渉に関しても、「協約破棄通告に至らず早期に円満解決できるよう」にとあっせん員の見解が示されました。また中労委あっせん委員から「協定破棄という事態は労使にとって好ましくない」と発言がなされ、『解約権の乱用』に対する歯止めとなる結果を勝ち取ることができました。

3、二〇〇四賃金について

(1)交渉経緯

 七月二六日の第一回あっせん作業での「口頭発言」に基づき、八月十九日に再開された団体交渉にて、本社は二〇〇四年度の日赤賃金について回答しました。内容は人事院勧告を参考にして、俸給表の改定は行わないことと寒冷地手当の削減および激変緩和措置を回答しました。日赤独自の回答として、寒冷地手当の削減は次年度実施にし加えて激変緩和措置の期間も人事院より多く取らせました。 全日赤は九月六日の団交で、激変緩和措置の再考とその他手当改善を追及しましたが、回答を変えるには到らなかったものの寒冷地手当の削減に関しては充分説明を行うことと夜勤手当の改善要求に関しては問題視することを確認したので、大会決定に基づき妥結する意向を示しました。

(2)本俸について

 改定は行わないので現行どおりとなります。

(3)寒冷地手当

 (1) 従来の5級プラス北海道甲・乙・丙を含め8区分であったものを、支給額の低い現行1級から3級の3区分を切り捨てる形で、新たな区分割をし4区分となります。
 (2) 世帯主等の区分についても扶養親族の2以下と3人以上の区分を統合し、扶養親族の有無で区分します。
 (3) 全体的に支給額を引下げられます。
 (4) 期間合計額一括支給を廃止し、月額支給となります。
 (5) 実施時期は平成十七年四月一日です。

(4)協定書

 協定破棄の通告を撤回させるまでには至りませんでしたが、破棄通告により効力を失う協定については、今次改定部分を除き現行協定が効力を有することを確認することで、破棄通告が無かったものと同様の意味を持たせました。

(5)交渉議事録

  今年度の賃金交渉において、違法当直を是正し勤務に切り替え始めている状況から検査技師等の夜勤手当の改善を追及しましたが、本社は検討することすら回答しなかったので、課題であることを明確にする意味の交渉議事録を作成し、今後の交渉での足がかりとしました。


あっせん員見解 平成一六年九月八日

 日本赤十字社の今次の賃金紛争については、労使が自主交渉を再開し無協約状態にないよう早期解決を図るよう要請し、あっせん作業を暫時中断していたところである。
  この間、労使交渉が続けられ、本日、労使双方から平成一六年度の賃金改定については、大筋で合意した旨の報告をうけた。こうした経過を踏まえ、あっせん員としては、次のとおり見解を提示する。
 1 平成一六年度の賃金については、時間的制約もあるので、無協約状態にならないよう、引き続き、労使が努力すること。
 2 今後の賃金交渉に関しては、日赤労使は、日本赤十字社の社会的役割を十分認識し、健全で安定した労使関係の構築に努め、自主解決に向けて努力する。また、協約破棄通告に至らず早期に円満解決できるよう、第三者機関の活用も念頭に置きつつ、誠意をもって対応すること。

横溝中労委あっせん委員発言

 なお、協定破棄という事態は労使にとって好ましくないことなので来年度については、先ほど示した見解を尊重するよう強く要望する




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