JRCSWU

「安全な職場づくり」のための要求書つくりを提起
全日赤・国共病組合同看護学習会

日赤労働者740号



 十月二十四日〜二十五日、東京・池袋で開催された合同看護学習会に十五単組・本部あわせて二五名(全体で四四名)が参加しました。
 一日目は全体学習会で日本医労連看護闘争委員長の大村淑美さんから、厚労省の「看護職員需給見通し検討会」の動向や来年十校が開校することになった准看護師の移行教育の現状について等、報告していただきました。
 続いて職場から、成田単組からこの五月に起こったKCL静脈注射事故の経過、唐津単組で試行されている2交替制夜勤の経過についての報告を受けました。
 成田では「医療事故は個人責任ではなく組織の問題」であると病院を追及しています。事故当事者の看護師は看護部の方針・援助もあり現在定期的にカウンセリングを受けていますが、彼女の心の傷は深く「看護師はしたくない」と言っているという話には参加者一同胸が痛みました。
 KCLに替わるメディジェクトKの採用を病院が見送った矢先の事故であり、安全な器材の採用は病院の責任であることを示している事例だと言えます(事故直後に病院はメディジェクトKを採用)。このように事故が起こってからではなく、ふだんから安全対策について組合として病院に要求・交渉していくことが重要なのです。
 唐津では九月から循環器・神経内科病棟で2交替が試行され、病院側から当該職場に対して「試行中だから口外しないように」と箝(かん)口(こう)令(れい)が敷かれています。単組では引き続き病院と交渉をもって休憩時間、休憩場所の確保などを追及しているところです。
 話は変わって、米・カリフォルニア州では二〇〇四年から看護師の配置基準が大幅に改善されています。例えば集中/重症ケア病棟の配置数は一対二、内科/外科病棟では一対六(二〇〇五年からは一対五)となっています。この数は平均ではなく、最低基準でいつでもすべてのシフトで配置しなければならないという配置数が法律で定められています。
 この法律の根拠として「安全な看護配置基準は時間外手当への支出を抑え、看護師の離職率を抑え、患者の回復効果を高める」というデータがあり、正看護師配置率の高い病院は三〜六%入院期間が短いと証明されています(Harverd Pablic Health Study)。
 アメリカの医療といえば日本もお手本にしている市場主義経営が有名でしたが、行き過ぎた経営効率追求のため看護師が職場を離れ、看護の質が低下しついにプライマリーナーシングが崩壊したという報告もあります。(「コード・グリーン)」日本看護協会出版会)このことは衝撃的な事実でしたが、安全な職場をどうつくるかという議論をするときに人員配置や安全システムだけでなく、看護師増員や長く働き続けられる病院にするためにどうするかということも重要な課題であると改めて認識させられました。
 全日赤看護闘争委員会では「医療事故が起こったら」という資料を作成し提示しています。今学習会ではこれをもとに職場で議論し「安全な職場づくり」のための要求書をすべての単組で提出しようという提起が行われました。
 二日目はそれぞれの組合で職場実態を交流しました。「師長命令」が何よりも優先となりモノが言いにくい職場になっている、今回の診療報酬改定で病院が「亜急性病棟」を採用したが思ったほど収益が上がらず、結果として職員の時間外労働が増えたなど、政府の低医療費政策の言いなりで何の展望も見いだせない経営方針に職員が振り回されている実態が明らかになりました。
 多くの看護師が働く喜びを感じることがなくなり、職場を去る仲間もあとを絶ちません。看護師の手に看護を取り戻すため、これからが頑張り時であると言えるのではないでしょうか。




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