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二交替制はそんなにすばらしいのか?

日赤労働者742号



 今、看護職場を中心に「長時間夜勤・二交替制」が広がっており、日赤においても導入の動きが強まっています。10年前に国立病院で試行が始まりましたが、導入の理由にデメリットもあるがメリットが大きいとして反対を押し切り開始されました。二交代制職場の現場からは「長くは務められない」と言う声が上げられているなか、一部には「前よりは楽になった」「三交代には戻りたくない」との意見も聞かれます。日赤本社もメリットだけを強調し全国に広げています。日勤深夜など劣悪な勤務と比較するだけで判断せず、二交替制導入の本質を見抜く必要があります。

経営者にとってのメリット

 看護師の長時間二交替夜勤は、一九九六年から当時の厚生省国立病院部が全国の国立病院に導入を指示、労働組合の大反対を無視して強行導入したところに端を発しています。二〇〇四年度の診療報酬改定で夜間看護において患者十人に看護師一人という基準ができたことで、いま二交替導入にはずみがついています。二交替制なら看護師を増員しないまま十対一の看護体制が可能になるからです。
 経営者にとって二交替制は人件費の削減につながり取り入れたい制度なのです。それをあたかも労働者や患者にとってメリットがあるかのように描き出そうとしています。
 本社看護部長は「本社として二交替を進めているわけではないが、二交替の方が三交替より夜勤回数が少ないでしょ」と言っていますが、三交替より夜勤時間が長いのだから回数は少ないのは当然です。二交替導入で一時的に夜勤回数は減っても、これでは働き続けられないと退職者も増えるから結局夜勤回数は増えるのです。

長時間労働の是正と夜勤制限を

 もともと一日の労働時間は八時間が基本ですが、日本では労働者を長時間働かせることで利益を生みだそうとする経営者の思惑が優先され、長時間労働やただ働き(サービス残業)の温床となっています。また「二十四時間社会」で昼夜の区別を付けることはおかしいとして、裁量労働制の拡大・深夜業の女子保護規定撤廃のように様々な業種・職場に夜間労働が広がっています。
 こうした中で二交替か三交替かとメリット・デメリットだけで議論することは危険な側面があります。夜勤労働についての正しい視点がないと今の夜勤体制について正しい批判・点検はできず、目先をごまかされ、力関係で押し切られることも考えられます。
 人員不足による長時間労働や夜勤の休憩時間などの現状を放置しているうちは「日勤深夜入りより二交替のほうがまし」に流れてしまいます。これでは問題の本質は何ら解決されません。「夜勤そのものが労働者にとって有害な問題である」という認識を労働者共通のものにした上で、それを経営者や国にも認めさせていく夜勤制限闘争にしなければなりません。

世界的に夜勤は有害業務となっている

 ILOが設置した夜業についての専門家会議は、(1)深夜労働は男女ともに有害である、(2)夜勤労働がやむを得ないものは社会的サービスや技術上の必要にもとづくもの、(3)女性だけに対してのみ適用される保護制度は職業上の差別と同様で不適当である、(4)深夜労働を抑制する規制は男女とも同じであらねばならない。という夜業条約草案を示し、一九九〇年に男女共通に規制する夜業条約が採択されました。(その後日本では、一九九七年に男女共通の規制のないまま労基法の改悪とともに女性の夜勤禁止条項を削除してしまいました。「保護ぬき男女平等」と言われるゆえんです)
 同時にILO勧告が出され、(1)夜勤労働者の通常労働時間は8時間を超えるべきではない、(2)夜勤労働者の平均労働時間は昼間の同一労働より短時間であるべき、(3)一週間の労働時間を短縮し有給休暇の日数を増加すべき、(4)夜勤の前後には超過勤務を回避すべき。など労働条件での措置や金銭的補修に関して明記されています。
 また看護労働においてはとりわけ労働者保護を考慮すべきであるという認識から一九七七年にILO看護職員条約が採択されたが、日本はこれらの条約を未だ批准していません。

国際法に照らして夜勤制限を

 これまで企業別・産業別にたたかわれていた夜勤制限問題を日本の労働者全体で考えようというとり組みも始まっています。医労連でも二〇〇一年に「夜勤交替制勤務と健康・安全・事故国際シンポジウム」を開催し、国際的運動を巻きおこしています。こうした運動が単発的なもので終わらないよう、今後もILO条約の批准運動を含め、労働者の健康を守り日本社会のあり方を問い正す夜勤規制運動が求められています。
 一番大切なことは、私たち労働者自身が危険で不健康な夜勤の現状を惰性で受け入れてしまわず、夜勤問題についてもっと学習を積み重ねて議論し、運動につなげていくことが必要です。

伊達では組合アンケートで圧倒的多数が反対を表明

 伊達日赤病院では、昨年十一月八日団交で病院側は、精神科病棟での二交替制を、(1)午後四時十六分〜翌朝九時十四分(十五時間四十八分)、(2)休憩七〇分、(3)夜勤人員2名、という内容で十二月一日より施行したいと提案してきました。
 しかし、組合とは試行後に協議すると述べたため、重大な労働条件変更問題を労使協議・合意なしにおこなうことは、極めて不誠実であり病院側も受諾した地労委あっせん「今後団体交渉を誠実かつ速やかにおこなう」(平成十年十二月)に違反する、と組合が厳しく追及し、提案自体を認めませんでした。
 その後病院側は、十一月三十日看護部長交渉、十二月二日団交で再提案し、「医療事故の危険性は二交替の方が少ない」などと実態を無視した理由をくり返しましたが、組合側が医労連の実態調査など具体的データで追及するなかで、「強行するつもりはない。大多数の納得を得られれば施行に入る」と回答しました。
 この回答をとらえて組合は、二交替長時間夜勤導入に対するアンケートをとりくみ、賛成七名、条件合えばやってみたい四十六名、反対百六十名と圧倒的多数の職員が反対していることが明らかになりました。




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