JRCSWU

勤務成績に基づく昇給制度に対する意見(1)

日赤労働者763号




本社より「勤務成績に基づく昇給制度」に対する意見を求められ、文書で提出した全日赤の見解をシリーズで掲載します。

勤務評定の試行について

 まず、日赤本社が五月一日より実施した勤務評定の試行については、全日赤との交渉を打切り一方的に行ったものであり、全日赤が合意したものではない。
 昨年一二月二一日に労使双方が受諾した中労委見解である「試行も含め引き続き協議を行う」とは、試行をするかどうかも含めて十分協議することになったものである。それは一〇時間におよぶあっせん作業の経緯をみれば明らかである。これに反して協議を打ち切り一方的に実施したことについて改めて抗議の意を表するところである。
 四月一二日に提案して五月一日から試行実施では、協議時間も充分であるとは言えないし、試行実施要項も団交での正式提案はなく試行内容についての協議も行っていない。また試行施設での準備も不充分な中で行われた試行であると言わざるを得ない。
 加えて「実施要項の目的」は「勤務評定基準の妥当性及び手続きの実行性等を確認するため」としており、評定を受ける側のプレッシャーや気分感情、評定する側のプレッシャーや気分感情を把握するものではなく、職員をランク付けするためのシステムとして妥当性実行性をみるだけの試行となっている。これでは我々が指摘している勤務評定の弊害を把握することはできないものであると言わざるをえない。

勤務成績に基づく昇給制度の導入について

 提案されている勤務成績に基づく昇給制度の導入は、断固反対である。なぜなら、チームで仕事を行う医療や福祉の現場に、労働者をランク付けする勤務成績の評価(以下、勤務評定という)を持ち込むことは、チームワークを壊し、安全・安心の医療・看護・福祉にとって危険な制度だからである。
 このことは、既に成果主義賃金・勤務評定を導入している竹田綜合病院での職員アンケートで、「目標設定のため労力をとられ、本来の仕事ができなくなった」「目標設定は形式的なもので、患者中心の医療がなされていない」と医療・看護の質の低下を嘆く声が聞かれるのと合わせて、患者からは「病院全体に笑顔がみられなくなった」「医師は患者の顔をみない。看護師は声がけがなくなった」など、病院全体の変化を指摘する投書が増えていることからも明らかである。
 なぜ導入するのかの質問に対して、本社は「日赤のサービスを受ける人たちのために、よりいっそう職員の士気高揚をはかり、能率的な人事管理を推進し、組織の活性化を図るため」と答え、そのためのツールとして「勤務実績をより的確に給与に反映しうる制度を構築する」と説明している。また「競争原理によって士気の高揚をはかる」と答弁してるが、人の命を守る医療や子供を預かり養護・保育を行うのに競争する必要はないと考える。逆にこうした職場に競争原理を持ち込むことは仕事に対するやり甲斐を無くさせ、士気を下げるものになる。このことは、竹田綜合病院や社会保険病院でも導入後、多くの職員がメンタル的に病み、退職していることが物語っている。また、評価をする評定者にしてみても、勤務評定という新たな業務が加わることで業務が煩雑となる。公平な評価をしようとすればするほど評定業務に埋没してしまうし、客観的で公平な評価ができないなか評定者の退職にもつながっている。
 職員に対する適切な指導や教育にこそ力をそそぐべきところを、ただランク付けするだけの制度は、チームで仕事をする現場には全く不要である。なぜならチームの中の個人をランク付けする客観的で公平な評定基準の構築は不可能だと考えるからである。抽象的な評定基準は評定者の恣意的な判断をぬぐい去ることはできない。




過去の記事 目次へ戻る