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なぜ今防衛省昇格、教育基本法「改正」か

日赤労働者766号



 自民、公明両党により教育基本法の改悪が強行されました。なぜいま教育基本法を改定する必要があるのか、政府はまともな説明を行っていないし、そればかりか、「教育改革タウンミーティング」では「やらせ質問」や「さくら」の誘導・世論偽装の事実が発覚しました。
 政府が改悪教育基本法で真っ先にやろうとしていることは、全国一律学力テストや学校選択制です。
 「教育の機会均等が脅かされ、能力主義的競争が激化し、格差社会の拡大・固定化がもたらされる」(松山大学・大内裕和助教授)との指摘もされています。いじめ問題もさらに深刻化する危険も考えられます。

憲法改悪の先取り 「防衛省」=実質的な軍隊への道

 また、「防衛省」昇格法案も、民主党が賛成に回り成立しました。
 これまで『防衛庁』は、特殊な行政機関でした。「省」は、内閣の統轄下で行政事務を行う機関として設置され、「庁」は「省」の外局(国家行政組織法3条3項)です。
 防衛庁長官だけが、気象庁や社会保険庁など数ある長官の中で唯一、国務大臣(防衛庁設置法3条)でしたが、「閣議請議権」(内閣法4条3項)は、ありませんでした。
 「同法案は内閣府の外局に位置付けられている防衛庁を省として独立させ、現在は首相が行っている法案提出や予算要求などを防衛相が直接行えるようになるが、『業務内容自体はほとんど変わらない』(防衛庁幹部)のが実態。むしろ、省昇格によるイメージアップが主眼となっている」(毎日新聞10/27)などの報道もありますが、そんな生やさしいものではありません。
 同時に行われる自衛隊法「改正」を見れば、自衛隊が質的な転換を遂げることになる、そのことが理解できると思います。
 それはこれまでの自衛隊法3条の自衛隊の任務に、「わが国を防衛すること」などに加え、海外派兵を「本来任務」にすることです。現在までにテロ特措法やイラク特措法で自衛隊を海外に出していますが、このことでアメリカ追随の路線に歯止めがかからなくなることを恐れるものです。
 そうした多くの国民の疑念に対し、防衛庁・自衛隊はそのホームページにおいて、Q&Aの形で「省にすることで、シビリアン・コントロール、専守防衛、軍事大国とならないことなど、わが国の防衛政策の基本が変わることはありません」などと説明しています。

シビリアンコントロール(=文民統制)はすでに失われている

 しかし、先日山口・広島両県で開催された〇六日本平和大会の分科会で、石川島播磨など軍需産業の労働者が戦地に動員されている、との報告がありました。
 「すでにこれまで19回57人の民間人が『徴用』されている」「命じられた者は同僚や家族にも秘密で行く。国民にも国会にも知らされないまま『戦争協力』は進行している」(渡辺鋼・重工産業労組書記長)というのです。
 このことは国会でも問題になりましたが、政府の側は「防衛機密」、企業側は「顧客情報(この場合は防衛庁)」を盾に、明らかにしていません。
 06年9月に国民保護法が施行され、有事法制はほぼ完成。07年1月防衛省昇格と海外活動が本来任務に。在日米軍再編と合わせ、今年3月には陸自中央即応集団が創設されます。自衛隊法122条には「防衛秘密保全」のためとして、テロ特措法と一緒に、「民間人も懲役5年以下の罰則」が規定されました(01年11月)。
 今後はより広範囲に、民間人が徴用される可能性は十分あると言わざるを得ません。

教育基本法、靖国、そして9条改定はセット

 こうした憲法改悪の「先取り」の動きをどう捉えるべきでしょうか。
 弁護士法違反で逮捕され、民主党を除名された西村真吾衆議院議員は、教育基本法「改正」の目的を、「お国のために命を投げ出す日本人を生み出す」ことだと、あからさまに述べていました。

「戦争する国」のための人づくり

 高橋哲哉・東京大学教授は、「二一世紀の靖国神社が準備されようとしている」「憲法9条を変えて自衛隊改め自衛軍、つまり新しい日本軍ができれば、例えば中東、あるいは台湾海峡、あるいは朝鮮半島で米軍と一緒に武力行使をするなどということが想定できる。その時、こちら側に死者が出たときにどうするのか?」「自衛軍だから靖国神社に合祀しようということになってくる」とし、9条改定と靖国護持は「ワンセット」と述べています。
 権力者の狙いは、教育を時の政府の国策に従うものに変えることであり、今回のやり方と合わせて、安倍内閣の本質を示すものです。安倍首相は、これらの本質を覆い隠すためのレトリックとして、『美しい国』という言葉を使っているのだと思います。
 そして、その先に憲法「改正」があることは間違いないでしょう。

『壊憲』させない 今、立ち上がる時

 次期通常国会では、憲法改正のための「国民投票法案」や「共謀罪法案」成立、そして、財界が要求する、残業代ゼロ・首切り自由化などの『労働ビッグバン』が企まれています。労働組合が国民的な大運動をまき起こさなければなりません。

 




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