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勤務評定Q&A

日赤労働者767号



Q1 頑張れば賃金が上がる制度ではないのですか?

 本社はそのように言いますが、実態は、相対評価により一部の者のみが賃上げとなり、ほとんど(8割の職員)が頑張っても評価されない制度(資料2参照)です。いわば「賃金を上げて欲しければ文句を言わずにもっと頑張れ、他の人よりも頑張れ」というものです。

Q2 頑張ったら良いではないですか?

 日赤本社が提案している「勤務評定に基づく昇給制度」の実施要綱にも、「職員の士気の高揚、組織の活性化を図るため」と目的が記載されており「やる気を起こさせるため」だと言います。しかし全日赤が行った試行施設でのアンケート(1面参照)では「やる気が高まった」と答えたのは、たった2%でした。逆に「やる気が起きなかった」と答えた人は78%で、目的を達成できない制度と言えます。

Q3 頑張っている人は評価されるべきではないですか?

 頑張った者を評価するのは必要です。しかし誰が一番頑張ったのかを決めるランク付けは必要ないし、チームワークで仕事をする病院や福祉の職場において個人のランク付けは不可能です。例えば、綱引きで勝ったチームの誰が一番頑張ったかを判定できないのと同じです。みんな頑張っているのに、評価される者とされない者をつくることは、やる気を無くさせます。そもそも「頑張っている」とは、何を頑張っているのかが問題です。患者や利用者のために頑張っていても評価につながらないものです。それは評価基準である「勤務評定記録書」(資料1参照)のなかにそのような項目は少なく、逆に「施設の方針に基づいて」や「上司の指針に基づいて」「職員としての自覚」などが目立つことからも言えます。また、ある試行施設で「看護師が看護業務をするのは当たり前であり、他の部分で評価する」と師長が発言したことからもうかがい知れます。

Q4 でも頑張っていない人もいます。 

 本社や施設側も「頑張っていない者が、他の者と賃金が同じではおかしい」と言いますが、「頑張った者を評価する」と言いながら「頑張っていない者がいる」と言いくるめようとするのは詭弁にすぎません。頑張った者を客観的に評価できないからそのような言い方をするのです。頑張っていない職員がいるとすれば、ランク付けするのではなく、指導・教育するのが上司や施設側の役目です。

Q5 客観的な評価はできないのですか?

 客観的とは、「誰が見ても評価に値する」ということですが、そのために勤務評定を行うのであれば、公平で公正な評定でなくてはなりません。しかし、本社が提案している評定基準の「勤務評定記録書」をみれば分かるように、抽象的な評定基準で上司の考え方に左右され恣意的な評定となるものです。全日赤は、このような勤務評定では客観的な評価はできないと考えます。「誰が見ても評価に値する」ものとしては、勤務年数や資格取得などによる特別昇給を行えばよいと提案しています。

Q6 賃金は下がらないから良いのではないですか?

 賃金に関係なく、職員を勤務評定でランク付けすることが問題です。ある試行施設において、評定結果が知らされた後、職場の雰囲気が悪くなったとの意見が寄せられています。「なぜそのような評価になるのか」など納得性がなく、「なぜあの人よりも下なのか」という公平性も感じられず説明もないからです。別の試行施設で「反対の者は反対であることを評価の対象とする」と師長が言ったように、ランク付けは脅しの材料として使われかねません。

Q7 説明すれば良いではないですか?

 評定結果に対する根拠が曖昧で説明ができないのが本音です。例えば、勤務評定記録書の結果は本人に見せないと言っています。なぜなら「結果を見せることになると評定者が評定しにくくなる」と言うのです。評語(ABCなどランク付け)の結果のみ通知するとなっていますが、ランク付けも曖昧です。調整者は着眼点の評価なしに「バランスを調整する」と回答していますし、同じ点数の者を分布率に従って区分する際の手法についても明確な回答はありません。富士通で評定者をしていた人が「結局、遅刻早退や年休の数で判断した」といっているように、「文句が多いから」とか「気にくわない」からと言った恣意的なものになる可能性があります。

Q8 労働者にとってメリットはないのですか?

 ありません。「百害あって一利なし」です。一部の者は賃金が上がるのでメリットがあるかのように見えますが、その人は、その後「評価に値する仕事」を求められるようになりますし、周りからもそのように見られます。それなのに賃金表の上限は決まっているから早くに枠外昇給となり僅かな賃上げしかありません。その人にとっても不幸ですし、職場の雰囲気は悪くなりデメリットしかありません。

Q9 施設にとってはメリットがあるのですね?

 権利請求を控えたり、時間外手当の請求を減らす効果や、ベテランが嫌気をさして辞め賃金の安い新人に入れ替えるなど、総人件費の抑制の目的は達成できるかもしれません。また従順に「文句も言わずにはたらく労働者」をつくり好き勝手にできるかもしれません。しかし、そのことが組織の活性化には決してつながりません。技術の継承がなされない。チームワークが阻害されるなど働きにくい職場で、安全・安心の医療や看護・福祉の実践ができるものではなく、逆に医療事故にもつながりかねません。そのことが経営にとってどれだけのマイナスかを考えればデメリットの方が大きいと言えます。




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