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〜竹田綜合病院を訪ねて〜 |
日赤労働者756号 |
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成果主義賃金を実施した福島の竹田綜合病院の労働組合を訪問し、そこでの様子を聞くことができたので、報告します。インタビュアーは全日赤本部の太田と藤田です。 竹田綜合病院は、福島県会津若松市にあり一〇九七床の病床を持ち、地域医療支援病院と臨床研修指定の資格をもつ基幹病院です。職員数は医師一〇一名、看護師六七二名、医療技師九七名、薬剤師二五名、事務二四四名その他職員を合わせると一二九七名を有します。看護学校も経営しています。 経営コンサルタントのすすめで始まる
目標管理が大きな負担 勤務評定の基準が目標管理にあるため、半期毎に上司の面接を受け、目標をもつが、そのとおりできないことがある。例えば、看護師だったら「患者満足度を二〇%あげる」とか「転倒する患者さんを昨年はこの病棟に五人いたが、今年は二人にする」などとあげても、一人では達成できないし、「病棟稼働率を上げる」とたてても個人の努力だけでは、どうしようもない。数値目標を立てるよう言われるが、数値に表せないことが多い。努力してやっても、面接で「あなたのキャリアなら、その程度は当たり前」と言われ、よい評価はしてもらえない。上司による評価のバラつきも深刻で、目標の難易度や達成度によって五段階の評価があるが、努力してやっても、「やって当たり前」と言われるなら、やらなくてもいいのではと考えてしまう。勤務評定が入って五年間で一〇回の目標をもってやってきたが、今ネタ切れ¥態。通常の業務の他に、目標管理の業務が増え、過重な負担になり、止めてほしいというのが職員の本音だ。 退職者が続出 最初の年の四月〜一二月の間に多くの中堅職員が退職した。一ヶ月で三〇人辞めた月もあった。師長の退職者も相次いだ。職場はギスギスし、メンタルを悪化させる職員も増えている。確かに人件費は削減されたが、患者さんも減って、経営もたいへんになっている。目標管理のために、ずっとパソコンの前にすわっている看護師の周りで、他の看護師が飛び回っていることもあり、「なんであの人の目標のために、私たちが苦労するの?」という疑問がわく。飛び回って仕事をする人は何の評価もされないのだから。 不服申し立ては五年間で三人だけ 経営側は透明性を確保するため、不服申し立て制度(裁定委員会)をつくったというが、申し立てした人は五年間で三人だけ。なぜかというと、一〇人の管理者の前で不服申したてについて説明させられ、とても嫌な気分を味わうこととなり、その体験を聞いた職員はがまんしてしまうという。評価に妥当性も信頼性もなく、ガラス張りというのは建前だけと感じた。 仕事にやりがいは感じられない
アンケートの自由な書き込み欄にも職員の本音が現れている。 ★上司にお世辞を使ったり、文章表現の上手な人が高い評価をうける。スタッフの中には目標管理の事ばかりしていて、ベッドサイドには行かず、その分他のスタッフに負担をかけている。その人には患者から苦情がきているが、上司は注意できない。 ★目標設定のため労力をとられ、本来の仕事ができなくなった。 ★目標設定は形式的なもので、患者中心の医療がなされていない。 ★目標管理は盲点が多すぎる。看護の大切なものを見失う恐れあり。客観的に公平な評価は困難。目標を持つことは良い事だが、目標管理は職員を信頼せず、意欲を失わせる制度だと思う ★後輩への指導は、目標管理の中では埋もれてしまいやすい。新人を育成するのに、ちょっとした指導が大切なはずなのに・・・ ★高い評価をもらうと、他のスタッフとしゃべりずらい。目標がプレッシャーになるし、残業も増える。体調を崩したが、人数が足りないので、なかなか受診できなかった。受診の結果、ストレスだと言われた。 成果主義賃金は医療の職場に入れるべきではない インタビューして感じたことは、竹田綜合病院の職員は、自分たちのおこなってきた医療や看護に誇りをもって仕事をしてきたのに、それが崩されてしまうような賃金制度だということでした。患者さんからも、「病院全体に笑顔がみられなくなった」、「医師は患者の顔をみない。看護師は声がけがなくなった」など、病院全体の変化を指摘する投書が増えているということからも、絶対に導入するべきではないと改めて感じた。竹田綜合病院の労働組合も、ただ黙ってみていただけではなく、様々な取り組みをしてきた。そして、今問題の多い目標管理制度中止を要求し、経営側も制度の見直しに着手しているという。 |
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