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機関紙「日赤労働者」

2010年を展望して

 第170臨時国会の施政方針演説で鳩山首相は、「財政のみの視点から医療費や介護費をひたすら抑制してきたこれまでの方針を転換し、質の高い医療・介護サービスを効率的安定的に供給できる体制づくりに着手します」と演説しました。私たちの目指す方向と一致するものの、その実現には、私たちの全力を挙げた運動と大きな国民世論の後押しが必要です。そこで、2010年を展望して、私たちの運動と大きな関係を持つ、各界の方々に、それぞれの立場から抱負を述べていただきました。

今年は確実に転換をはかる年にしよう
医労連委員長 田中千恵子

田中千恵子 全日赤のみなさん、あけましておめでとうございます。新しい時代が始まりました。新政権は、後期高齢者医療制度や普天間基地問題等々でブレがありますが、自民・公明政権を退場させたのは間違いなく全日赤のみなさんをはじめとする医労連の運動です。
 それは、2005年秋からの大増員闘争が、医師・看護師・介護職員不足を社会問題に押し上げ、全日赤のみなさんが運動された長野赤十字上山田病院での地域医療を守るたたかいなどで、医療・介護崩壊を世論にし、運動と世論で政治を変えたのです。
 新政権の合意事項である、「後期高齢者医療制度は廃止し、国民皆保険を守る」「医療費の先進国(OECD)並みの確保を目指す」「介護労働者の待遇改善で人材を確保し、安心できる介護制度を確立する」「障害者自立支援法は廃止し、制度の谷間がなく、利用者の応能負担を基本とする総合的な制度をつくる」等々を確実に実行させましょう。
写真 また、「沖縄県民の負担軽減の観点から、日米地位協定の改定を提起し、米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で臨む」とした基地問題も、普天間基地の「無条件撤去」を求めてゆきましょう。ブレを正し、私たちの要求を実現させてゆくのは、医労連・全日赤の役割です。
 「医療費の心配ない」「病院がなくなる心配がない」国民が笑顔で医療や介護が受けられる国を実現したいものです。
 働く者のチームワークを乱し、医療をダメにする「勤務評定」は、いっさい提案できないようにしましょう。長時間・2交替制夜勤や不払い残業は一掃しましょう。休みが取れて、ゆとりをもって笑顔で働き続けられる職場に変えましょう。
 2009年、私たちは世論と運動によって政治を変えました。「変えることができる」という自信を身につけました。2010年は、確実に転換をはかる年にしましょう。もちろん、組合員も増やしましょう。
 いつも元気な全日赤のみなさまが、2010年も日本医労連の運動を牽引して頂きますことをお願い申し上げ、新年のあいさつとさせていただきます。

医療崩壊を食い止める医師の役割
全国医師ユニオン代表 植山 直人

植山 直人 私たち全国医師ユニオンは、初めての医師の全国的職能団体として昨年5月に結成されました。これまで医師の過重労働や過労死が社会的な問題となっていましたが、医療崩壊が本格化するまでは、勤務医の労働条件を改善する全国的な医師の組合を作る動きはありませんでした。ヨーロッパでは医師の組合があるのは常識ですしストも珍しくありません。
 私たちは、結成宣言で「医師が、肉体的にも精神的にも健康で、やりがいを持って働くことは、今日の医療にとって欠かすことのできない必要条件です」とし、「私たちの運動は、日本の医療崩壊を終わらせ、医療再生へ向かう潮流に大きく貢献するものであると確信します」と表明しています。
 日本では、医師は聖職者でありまた管理職であるため労働者ではないと医師自らも思い込んでいましたが、国の政策によってもマインドコントロールされていたと感じています。勤務医に労基法を適応すれば、医師数削減政策は実行することができなかったはずです。シビアにみれば、国はベッド数を削減する政策を持っていましたが、病院を減らすことは、地域住民や国民の抵抗があるため、反対が出ない医師数削減を先に進め、医師不足を理由に病院や病床数を減らす戦略をとったと考えられます。現実に、医師不足のために病院閉鎖やベッド削減が進んでいます。しかし、小泉改革に象徴される新自由主義の政策は、国民の怒りをかって政権交代が起こりました。民主党はこれまでの医療費削減政策を否定し、医療崩壊を防ぐために日本の医療費をOECD平均まで増やすこと、医師数を1・5倍にすること、そして勤務医に労基法を守らせることをマニフェストに明記し選挙に勝利しました。
 私たち全国医師ユニオンは、医療崩壊を防ぐためには根本的には医師を増やす必要があると考えていますが、一人前の医師を育てるには10年以上かかります。仮に医師数を1・5倍にする政策をすぐに実行しても、当面の10年間は現在の医師数で現場を支える必要があります。この間医師の労働は、医療技術の進歩と高齢化の進行で大幅に増加しています。このままでは今後さらに医師への負担が増え、医療崩壊が進行することは明らかです。従って、医療崩壊を防ぐためには労基法に基づいた医師の労働条件の改善と労務管理・健康管理を徹底する必要があります。現在、医療クラークの導入や女性医師への子育て支援などいろいろな議論が行われていますが、あらゆる手立てを財源を明確にした上で早急に行う必要があると考えます。そのためには医師自らが集団として声を上げる必要がありますし、国は国民に医療の現状を正しく知らせる義務があります。
 私たち全国医師ユニオンは、昨年10月には勤務医は労働者であること、労働法によって守られることを知らせるために「医師の働く権利 基礎知識」という本を出版して、普及に努めています。当面は勤務医の意識を変えることが最も重要な課題と考えています。
 さらに11月には、36協定の全国調査結果(主要な1549病院)を発表しました。この調査により、全国の公的な医療機関に大規模な労働基準法違反があることが判明しました。32時間を超える連続労働など病院で一番長時間働く医師が36協定から外されている悪質なものが多数みられました。この調査結果は、勤務医の労働問題に関する厚労省の無作が医師数抑制政策を安易に実行させ、医療崩壊を引き起こした事実を労働の面から裏付けるものです。
写真 私たちは、勤務医の当直問題や名ばかり管理職問題などで年間2000億円を超える不払い賃金があるのではないかと考えています。当直などを担当し最も長時間働く医師に労基法による適切な賃金が払われていない現状は、経営のモラルハザードであり、過酷な労働を担う医師の地位を低下させ、やる気をなくさせています。これらの問題は一医療機関では解決が難しい問題であり、診療報酬の適切な増額などの財源措置が必要です。
 私たちは当面、医師への情報発信を行い、医師自らの自覚を高めそれぞれの医療機関の組合に加入しさらに全国医師ユニオンに二重加盟して労働環境の改善に立ち上がることを呼びかけていきます。それと同時に国会議員への要請及び厚労省交渉等を行い、医師労働の改善措置を行うような政策を求めていきます。ただし、政権交代後も財務省は医療費削減に固執しており、財務副大臣は医療費の3%削減を求めています。私たちは、民主党にマニフェストを守らせるために大きな声を上げる必要があります。私たちは医療崩壊を防ぐために多くの医療関係者や国民と共に力を合わせて奮闘し、2010年を医療再生への新しい時代を築く年にしたいと思います。

地域医療の崩壊が語られている今
日本福祉大学大学院教授・国民医療研究所副所長 牧野 忠康

はじめに

牧野 忠康 2009年8月30日の総選挙で、日本国民は政権交代を選択し、転換を期待した。9月16日に、民主・社民・国民新党の連立政権として鳩山政権が発足して3カ月半を経て2010年元旦を迎えた。
  そこで、この政権に地域医療の再構築をどう担わせるのか?、この政権に何を期待できるのか?、自治体病院・公的病院を潰してはならないと考えている立場で、語りたい。

I 地域医療とは何か?

 今語られている地域医療は、医療供給側の病院・診療所、行政、医療経営アドバイザーなどの立場での「地域医療の崩壊」である。しかし、地域医療の主人公は地域住民である。その立場から、地域医療が語られることは、ほとんどない。
 地域で医療を継続し展開していることは、住民にとっても重要なことである。しかし、地域で立地して病院や診療所などの医療機関を経営し医療サービスを提供することだけをもって地域医療というならば、どのような形態の医療機関であってもそうだといえる。
 しかし、それは誤りである。地域医療とは、生活圏で保健・医療・介護・社会福祉のネットが張り巡らされ生命・生活・生産を衛(まもる)システムが起動している状態をいうと考えるべきである。そして、それは、住民参画と参加が保障されている仕組みになっていなければならない。
 自治体に医療実践と政策提案が住民とともにできる条件を備えている自治体病院の経営と公的医療機関への支援から、撤収させてはならない。撤収は、自治体の役割放棄である。

II 地域医療を再構築する

 地域医療の崩壊とは、医師不足や病院赤字による病院経営の行き詰まりだけを指すものではない。
 地域医療の(再)構築とは、病院の存続を求めるだけではいけない。住民参画や参加の包括医療の設計と展開が実現し、地域の保健・医療・介護・社会福祉の連携システムのネットがきめ細かく張り巡らされ、在宅医療やプライマリー・ヘルス・ケアから高次医療や救急医療と災害医療までの展開が、生活圏外の諸資源との連携・搬送を含め生活圏で完備させていくプロセスだと考える。
 筆者(牧野)は、国民医療研究所地域医療再構築総合プロジェクトとして「住民参加型の地域医療再構築プロセスとメカニズムに関する実証的研究」を推進している。研究所の総力を結集するとともに、文部科学省科学研究費補助金(科研費)も申請して(現在申請中で、事業仕分けにひっかからないことを願っている)、3年ないし4年間をかけて住民参加型の地域医療構築の理論化をしたいと思っている。既に、2008年度から研究活動を旺盛に展開している。
 民主党マニフェストがいう「地域主権」は、地域医療の(再)構築が第一歩ではないのかと考えている。地域医療の崩壊は、地域の崩壊である。地域で、生命と生活と生産を衛(まもる)という原点は、地域医療にあり。

III 日赤医療労働者の責務

 民主党のマニフェストは、地域医療をどのような姿にするかを明示していない。ただし、「民主党は、『国民の生活が第一。』と考えます。その新しい優先順位に基づいて、すべての予算を組み替え、子育て・教育、年金・医療、地域主権、雇用・経済に、税金を集中的に使います。」と言っている。しかし、本格的な予算編成の現段階で、これを必ずしもすべて約束として守るということでなくていい、と言い出している。
写真 地域医療の再構築という観点からは、「年金・医療」と「地域主権」の具体化とその実現を実行させることが、民主党に政権交代の機会を与えた国民としての責任である。
 救急医療や災害医療に責任をもつ公邸医療機関に働く日赤医療労働者は、その土台としての高度・急性期医療や地域を見つめる在宅医療やプライマリー・ヘルス・ケアを住民とともに充実・強化することで地域医療文化の創造に貢献する必要がある。

おわりに

 2010年は、地域医療の(再)構築に関わっての正念場である。
 地域医療崩壊の問題では、全国各地で優れた闘いがあり、豊富な経験を蓄積している。しかし、闘いの教訓が、「点」としての存在になっている。地域医療構築の闘いには、敗北はない。闘いのプロセスが、住民とともに医療のあり方を学習し医療の民主化や社会化につながっている。点から「線」へ、そして「面」へと大きなうねりをつくり、全国に確信と自信と誇りを拡げたい。
 地域および全国の医療労働者が共に連帯し協働して、足下の地域の歴史と文化を住民とともに見つめなおし、地域住民とともに地域医療という社会的共通資本の蓄積に医療労働者の立場から貢献しよう。

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