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広島原爆病院の休日出勤手当支払い請求訴訟について 弁護士 石口 俊一

はじめに

石口俊一弁護士
石口俊一弁護士

 昨年2月東京で、全国各地から参加の全日赤の皆さんに対し、2008年11月25日に広島地裁へ提訴した「休日出勤手当支払い請求訴訟」(平成20年(ワ)第2276号事件)について、労働契約法の説明と関連させて報告する機会がありました。従前から、全国各地の病院などで、休日出勤手当の廃止を巡る同様の問題が起きていましたが、何故か広島が訴訟ではトップランナーとなり、先の報告の歳にその訴訟代理人としての重責をひしひしと感じました。
 その後、1年余りの審理を経て、2010年2月3日の第9回弁論準備手続期日において、被告の日本赤十字社が「認諾書(平成22年2月3日付け)に基づき本請求をいずれも認諾する」ということで訴訟が終わりました。

本訴訟の提訴まで

 この訴訟の原告らは、原爆病院に勤務する八幡さんら5人の看護師、准看護師です。従来から休日出勤手当の廃止を巡る労使交渉が行われてきましたが、2008年5月2日に、日本赤十字社が「平成20年7月31日をもって、休日出勤手当(100分の135)の支給に関する労使慣行を破棄する」と組合に対して通告してきました。そこで、先の破棄通告に対し、私が組合の代理人として、同手当の不払いは労働協約違反であり、また労働協約違反であるとして翻意を求めましたが、8月1日以降の休日出勤に同手当を支払わなくなりました。そのまま黙って認めることはできないので、組合は訴訟を提起することを決意し、先の5人が立ち上がったものです。

本件訴訟の概要について

 原告らは、休日出勤手当は、(1)日本赤十字社と全日赤連合会との間で昭和32年12月12日に締結された労働協約に基づくもので、(2)同じく両者間で昭和36年12月9日に締結した組合員の賃金協定で「休日出勤には割増し賃金の支払」を定め、(3)日曜日出勤の代わりの休日は別にあるが、休日出勤手当を支給する協定は変わらない、と主張しました。
 これに対し、日本赤十字社は、原爆病院の就業規則に“休日の振り替え”が定めてあり、また先の賃金協定にも同様の規定があるから、休日出勤手当の不支給は労働協約違反に当たらない、支払ってきたのは根拠がなくいわばヤミ手当だ等と反論してきました。
 双方の主張は、賃金協定を巡る解釈論の違いのようですが、原爆病院での実態は、何十年にも渡って同手当が支払われてきた(組合OBの応援で、古い昭和40年代からの給与明細を証拠で提出)、また“休日の振り替え”規定が作られてからもずっと支払われていたものでした。このような実態が鮮明になって来るにつれて、裁判所は「手当の支払いは労働協約に基づくものと言わざるを得ないのではないか」と話すようになり、日本赤十字社は押し込まれていきました。

和解の提案を巡って

 日本赤十字社は、形勢不利と考えたのか、訴訟の途中で「手当廃止は撤回するので、訴訟を取り下げて、協議の段階まで戻したい」という趣旨の和解を提案してきました。この提案について、組合は、一時的な勝利解決にはなるけれども、また廃止に向けての労使交渉が再開されるだけで根本解決にならないと考え、逆に「手当は労働協約に基づく」ことの確認を第1項とした上で手当廃止を撤回するという和解案を日本赤十字社に提案しました。
 これは、碁の世界では「打って返し」、オセロゲームではほとんどの黒を白にひっくり返すような逆提案だったので、日本赤十字社はこの第1項が受け入れることが出来ず、かと言ってこのまま突っ張っていると「手当の不払いは労働協約違反だから払え」という全面敗訴の判決が待っているという状況に追い込まれました。

おわりに

 訴訟を終わる手続きには「判決」(勝訴と敗訴)・「和解」「取り下げ」等がありますが、冒頭で述べたように、日本赤十字社は、原告らの主張を全面的に認めた(認諾)ので、訴訟で争う対象がなくなって訴訟が終わることになりました。そして、「認諾」の翌日には、原爆病院の院長から全職員に対して、手当支給廃止を撤回し、対象の職員全員に対して遡って未払い分を支給するという通知が出ました。
 この訴訟の中で、傍聴支援の皆さんが、原爆病院の組合員から、組合OB、広島地域の組合員、全日赤の全国各地の組合員(松江からは毎回誰かが)とどんどん増えていき、法廷には全員が入りきらない状況になりましたが、皆さんの応援があってこその全面勝利です。1年前の東京での責任を果たせた思いと、労働協約に基づく手当だと認めさせた広島での解決を全国でおおいに活用してください。

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